実る程こうべを垂れる稲穂かな

思ったことを気まぐれに書きます

つわり

いまだかつて、これほどまでに自分の「お腹の虫」と対話したことがあっただろうか。

 

妊娠15週半ば。来週からやっと安定期に入る。

いつまで続くのか分からず、終わりの見えなかったつわりが、先日やっと終わったようである。

よく見かける、「出口の見えないトンネル」というのはまさにその通りだった。

私の場合、「ある日突然、霧が晴れるように」ではなかったが、確かに体調が改善していることは感じた。

そこで、初めての妊娠の初期を無事に乗り越えたこのタイミングで、これまでを少し振り返ってみたい。

 

 

昨年8月に結婚し、10月に夫との同居を始めて以来、なんとなく妊活を意識していた私は、生理前のちょっとした体調の変化に敏感だったことと、長らく生理不順だったため基礎体温を測っていたことから、生理が遅れて2日目で検査薬を試し、妊娠が分かった。

しかし、あまりにも判明するのが早すぎたため、すぐに病院には行かずただただソワソワする日々が続いた。

しかもこの時期は、受精卵の染色体異常による化学流産も珍しくないという。そのため、喜び半分、不安半分というなんとも落ち着かない日々だった。

 

5週で初めて受診し、胎嚢を確認、7週で心拍を確認した。

 

つわりは、想像していたようないきなり「うっ」となってトイレに駆け込むというものではなく、生理前にも感じるような、ひたすら泥のように眠る「眠りづわり」から始まった。

そのうち、グリルで魚を焼く匂いで気持ち悪くなり「匂いづわり」、空腹を感じるとなんとなく気持ち悪くなる「食べづわり」と順調につわり街道を歩んできた。

とくに食べづわりは、気持ち悪くなり嘔吐(えず)くものの、実際に吐くことはなく、日々検索魔になりつつも「つわりとはこういうものなのか…」と自分の身体を若干持て余していた。

とにかく、何なら食べられそうか、何を食べたい気分なのか、ということを頭や心ではなく、終始自分のお腹(胃袋)に問いかけていた。人としての尊厳を胃袋に乗っ取られいるような気分だった。

そして胃袋の答えはたいてい、「肉」および「ふりかけご飯(主に深夜0時前後)」であった。

 

ところが、11週の中頃、朝食に「牛乳・チーズ・ヨーグルト」という乳製品三兄弟を食べて横になっていたところ、今までとは少し違う気持ち悪さを感じた。

起き上がり、嘔吐きながら洗面台に向かい、「あ、これは出るやつ」と悟り、トイレに入るととうとうリバース。「吐きづわり」のバッジも獲得。

しかし、あまり嘔吐しても食道や胃に良くないのではと思い、我慢できる範囲で我慢することにした。

その後も体調は一進一退しながら徐々に良くなっていき、結局リバースしたのは4回だった。 

…と、そんなこんなで、五大つわりのうち、「よだれづわり」以外を見事コンプリートし、私のつわりは終わりを迎えた。

 

振り返ってみると、妊娠悪阻やそれに近い状態になる妊婦さんに比べれば随分軽いつわりだったように思う。実際、私の祖母は、それはそれは酷いつわりで起き上がることもできず、這うようにして移動していたらしい。

だが、苦痛の感度は十人十色であり、つわりの症状も人それぞれかつ妊娠の度に違うという声もある。そう考えると、そもそも比べること自体に特に意味はないのかもしれない。なんにせよ、お腹の子供が元気にすくすく育ってくれればそれ以上のことはないのだ。

 

 

何より助かったのは、自分自身が働いていないため好きなだけ寝られること(笑)、そして、夫が料理・洗濯・掃除・ゴミ出し…etc.なんでもやってくれること。

初めの頃こそ、「どんだけ寝るの」だの「何もせんやん〜」だの宣っていたが、「ホルモンのせいだからどうしようもないの」、「何もしないんじゃなくて、できないの」と根気強く言い返しつつ、なにかやってくれたら感謝するということを繰り返すうち、私好みの「黙ってよく動く夫」が完成していた。

ただ、夫があまりにも当たり前のように家事などを回し始めたら、それはそれで「もしかして私いらない?笑」と思うこともしばしば。自己肯定感だだ下がりの日々でした(笑)。わがままか。いや、体の中で人間を製造中なのだから仕方ない。

 

とにかくこうして、未知の妊娠初期を乗り越えることができた。

出産の恐怖や産後の子育ての不安など、今後も考えることは尽きないが、やっと迎えた安定期を謳歌しつつしっかりと準備していきたいと思う。

 

 

※余談だが、Twitterなどでつわりについて検索すると、「吐き気」や「嘔吐く」と表現したいと思われる投稿に「嗚咽」と表記されているものが散見される。語感だけで使用しているものと思われる。日本語は誤用が定着していく言葉が少なくないが、さすがにこの誤用は看過できない。ぜひ正確な意味をググっていただきたい。